top of page

Tableau実践問題集 #TableauChallenge を作りました。

Tableau MCPがつくる世界を想像する

  • 執筆者の写真: Yoshitaka Arakawa
    Yoshitaka Arakawa
  • 7月20日
  • 読了時間: 11分


ひとつ前の記事 公式Tableau MCPを一緒に触ってみましょう では、実際にTableau MCPを使ってみて体験することを目的としました。 体験してみることに焦点を置いたこと、またTableau Cloud環境の用意、Tableau MCPのインストール、Claude Desktopの設定などの準備で記事ボリュームが膨らんだことから、Tableau MCPって実際何が嬉しいのか?どのような世界を見せてくれるのか?については、ほとんど触れませんでした。 この記事では、MCPの世界観やデータ活用の未来像について掘り下げてみます。 そして最後に「まだTableauを学び使っていて良いんだっけ?」という問いに対しても、少しだけ考えてみます。


本記事は非技術者を想定して書いていますので、技術的と思われる用語や内容は省略しています。ご了承ください。 (というより自分も技術者ではないので、技術的な内容に踏み込み解説する自信がありませんでした。そのため厳密性を欠いた説明をしている部分もあるかと思います。概要を伝えることを目的としており、また自分の理解を整理するために書いていますので、ご容赦ください。)

そもそもMCPって何(自分の理解)


当然にようにMCPという単語を使ってきましたが、ここでは「そもそもMCPって何の略で、何のためのものなのか」について触れます。


MCP(Model Context Protocol)は、自然言語での指示を通じて、さまざまなアプリケーションやデータベース、APIなどと連携できる共通インターフェースを提供するための規格です。簡単に言えば「生成AIが複数のアプリやサービスと共通の手順で話せるようにするための標準的な仕組み」として自分は理解しています。


共通規格がなぜ嬉しいかという話は技術的になりそうなので、ここでは「MCPのおかげで、生成AIがアプリやサービスと連携しやすくなった」という理解で良いと思います。


例えば前の記事ではClaude DesktopからTableau MCP Server経由でTableau Cloudに通信していました。 実践した方によっては、例えばWeb検索が始まったり、ローカル環境またはGoogle Driveなどにある特定のPDFを読み込ませたかもしれません。

その状態を図示すると、以下のようになります。


https://modelcontextprotocol.io/introduction のGeneral architectureを参考に著者作成
https://modelcontextprotocol.io/introduction のGeneral architectureを参考に著者作成

上図では「MCP Server」という単語が出てきました。MCPの世界観では、本当はHost、Client、Serverの概念があります。この記事では詳細は踏み込みませんが、ざっくりTableau MCPはMCP ServerとそのMCP Serverが使用できる機能を公開し提供している、と理解いただけば良いのかなと思いました。 細かい区分はここでは脇に置き、この記事ではまるっと「MCP」と呼称します。


ちなみにClaudeがどのようなMCP Serverを利用できるのかで言えば、以下が参考になると思います。



Tableau MCPの何が嬉しいか


「MCPのおかげで、生成AIがアプリやサービスと連携しやすくなった」ことを理解したわけですが、これが我々Tableauユーザーや、データを利活用する人にとってどのように関係するのかを見ていきます。


典型的なTableau業務を考えてみる


例えば、営業企画部でTableauを使いデータを分析をする人を想像してみます。

毎週月曜日の朝、まずTableauを開くことから一日を始めます。目の前には複数のダッシュボードが並び、前週の売上やKPIの動向がビジュアライズされています。


そして特定のエリアで売上が落ちていることに気づくと、ダッシュボードに用意されたフィルターやドリルダウンを使って、業種別やチャネル別の詳細を調べ始めます。異常値の原因を探る中で、彼は別の情報源(例えば、営業チームが入力したSalesforceの活動ログや、キャンペーンの影響を示すGoogle Analyticsのトラフィック)と照合しながら、仮説を立てては検証を重ねていきます。


その仮説と分析と検証のサイクルの中で、データをアップロードまたはコピペすることで、生成AIに入力し対話をするかもしれません。 全ての情報がTableauに連携されていない場合もあるので、Tableauだけで完結せず、複数の画面を往復することもあるかもしれません。


そして必要な情報を揃えた後には、上記のような仮説検証の結果を念頭に、Tableau Desktopや既存のダッシュボードを使い、手探りに近い形でデータを分析します。

そして、ある程度の示唆が得られたところで、スライドなどに報告資料をまとめます。


Tableauを用いた分析業務は、単なるダッシュボードの閲覧ではなく、動的に可視化と思考を行き来しながら仮説を導き出す「対話的な探求プロセス」です。

このプロセスの中で、どれだけのアプリやサービスの画面を開くでしょうか?また、どれだけ手動でデータや関連情報を探しに行く必要があるでしょうか?



これ、MCPの世界なら生成AIプラットフォーム上で完結しそうですよね


MCPにより、生成AIを通じて必要な情報や操作を横断的に活用できる世界が作れます。それぞれのデータや情報に生成AIがアクセスし、その情報や文脈を理解した上で、生成AIが分析業務を助けてくれる。そんな世界を実現できます。

先ほどの例で言えば、生成AIに「今週の売上に異常があるか見てほしい。要因も探して」と自然に話しかけるだけで、以下のようなプロセスが自動で走る世界を想像できます:

  • 生成AIが、MCP経由でTableauのデータソースに接続し、時系列パターンやKPIを自動で解析して異常を特定する。

  • それが特定の地域に集中している場合、その地域の詳細データにドリルダウンする。

  • Salesforceの活動ログや、キャンペーンの影響を示すGoogle Analyticsのトラフィックなど、別のデータを確認する。

  • 必要に応じて、Google Driveに保存されている営業日報PDFや、Slackのチャンネルの投稿内容などもMCP経由で取得し、原因との関連性を分析する。

  • 最終的に、分かりやすいグラフと要約レポートを出力し、「原因の可能性は〇〇です」「△△という対策を推奨します」と返答してくれる。


これら一連の行動が、すべて1つのチャットインターフェースで完了する余地があります。Tableauの文脈で言えば、Tableau DesktopやWeb編集でアドホックなデータ分析や可視化作成をすることや、ダッシュボードを操作して必要なデータを集める必要が、究極的にはなくなるかもしれません。

まるで優秀な分析アシスタントと会話しているかのように、複雑な分析業務が一言の命令で動き出します。


データ分析やデータ利活用の体験が大きく変わる可能性を感じています。


MCP時代でTableau人材はどう動くと良さそうか


ここでは「Tableau人材」として想定するのは、例えばTableau Creatorライセンスユーザーとしてダッシュボードやデータ可視化の作成、更に踏み込めばTableau Prepなどを使用して分析用データを準備するような方々です。

少し抽象化して言えば、Tableauスキルやデータスキルを発揮し、他社や組織のデータ利活用を支援してきた方々です。


MCPと生成AIの普及によって、データ利活用のハードルが下がり、いわゆる「データの民主化」は更に進むと思います(生成AIだけでかなり進んでおり、そこにMCPが加われば、それはデータ利活用はもっと自由になりますよね)。


その中で、わざわざ操作を覚えないといけない形での、ソフトウェアに準拠したデータ利活用は不要ではないか?と思うかもしれません。これはTableauのようなソフトウェアに限らず、究極的にはSQLのような層まで及ぶかもしれませんね。だって自然言語で出来るじゃん、と。


この観点について、自分の考えを書いてみます。

まあ1ヶ月もしたら、全く別のことを言っている可能性が高いのですが...


「分析のファシリテーター」的なものを目指してみる


BIツール普及期でも生成AI黎明期でも良いのですが、いわゆる「データ民主化」が叫ばれたときに、どのような議論が起きたでしょうか?

例えばしんゆうさんの記事を拝借しますと、以下のような話は何度もありましたよね。 みんながSQLを書ける(データを民主化する)メリットとデメリット


「誰でも使えるけれど、誰もが正しく使えるわけではない」 分析目的の不明確さ、誤った仮説の元での指示、偏った視点でのデータ利用、効率的ではないデータ利用...これらはMCP時代でも変わらず存在すると思います。

余談:
Agent時代が本格化したときには意外と何とかなるのか?という気もしつつ...ただし、コスト面とガバナンス面でどこまで現実的か、という話があるように思います。
そしてAI同士でレビューしあったとしても、最終判断者は知見ある人間のままとなる気もするんですよね...一旦は人間起因の問題は残り続ける想定で続けます。

だからこそ、Tableau人材は「分析のファシリテーター」としての役割が求められるようになるのかなと。問いの整理、分析の意図の明確化、そして組織内での正しい解釈のガイド...これまで「つくる」ことが仕事だった人が「問いと分析設計を一緒に考える」ことが仕事になるのかな?と思いました。

ところで分析設計やレビューが仕事の中心になるという話をしましたが、それも生成AI側に代替してもらうこともできそうですよね。ChatGPTでいうカスタムGPTsのようなものに、知見や思考を与えて作業だけ代替してもらうイメージです。

(どこまでやるかは環境や要請、個人の判断によると思いますが)


AIとBIの使い分けに関する整理にも価値がありそうです。究極的には全てAIが実行できる可能性を認めつつ、実際には「それAIで毎回やる必要ある?」というような作業は、BI的なアプローチを継続する必要もあると思います。


生成AIは探索や仮説検証において高い柔軟性と速度を発揮します。 一方で、TableauなどによるBI的アプローチは、再現性と確実性のある運用が可能です。

端的には「AIはAd-hocと探索に」、「BIは定点観測に」構造で捉え、AIとBIは相互に補完し合う関係で利用する世界が良いのかなと思っています。そして、この世界観を構想し、妥当な切り分けで実現する人材が価値を持ちそうだな、と。


この辺りの話について、以下のNoteも参考になります。

文中にあるように『「どこで使うべきか」「どう設計するか」を見極め』ることが、分析ファシリテーターとしてのTableau人材として求められるかもしれません。


BI人材の知見を活かした生成AI時代のためのデータ整備に携わる


生成AIに渡すための適切に整備されたデータと、それを補完するメタデータの存在は、生成AI時代には不可欠ですよね。

例えばTableau MCPでは、生成AIがTableauのデータソース群から候補を見つけてクエリを実行します。しかし、似たようなデータソースが乱立していたり、名前のルールが統一されていなかったりすることも少なくありません。こうした状況下で、生成AIが“適切なデータ”を自動で選び出すのは困難です。最悪の場合、誤ったデータを使ってしまい、分析結果の解釈を誤るリスクすらあります。


現状で言えば、分析者が使用データの選定から分析結果の作成まで、判断を重ねながら進めていることが多いと思います。生成AI時代では、そうした判断をAIに委ねることになります。その際、「どのデータを、どのように、どの粒度で使うべきか」という背景知識がAIに伝わっていなければ、質の高い分析にはつながりません。


このとき、Tableau人材が果たせる大きな役割が「分析者としての知見を活かして、データの整備やメタデータの定義を行うこと」です。

不要データの整理や適切なデータを用意することは言うまでもありませんが、生成AI側が「どのデータを、どのように使うべきか」分かるように、例えばTableauデータソース側の情報や名前を整備しておくことも重要になるかもしれません。

加えて、分析の文脈、業務上の観点、特有の集計ルールなどを言語化し整備することも必要になるかもしれません。MCPならTableauのデータだけではなく、生成AIが文書を必要に応じて見るようにもできるので。


人間が知っている「使い方の背景」をMCP対応のデータ環境に組み込むことで、AIによる分析の精度と信頼性が大きく向上させる動き方です。こちらは「分析がしやすい土台を設計する人」へと役割がちょっと変わるイメージですね。

ダッシュボード作成を通してデータ文化を推進していた人が、(メタ)データ整備を通してデータ文化を推進する人に変化するイメージです。



最後に:役割をどう変えるか


MCP時代、とても面白そうでありながら、変化を迫られそうですよね。 自分はとてもワクワクしており周囲にもMCP時代について話して回っているのですが、同時に「今までと同じことしながら生きていけないかもなぁ」と思い始めています。これは将来的な要請を見越しての危機意識が半分、こちらの話に乗った方がもっとデータ利活用が面白くなりそうだという気持ちが半分です。

変化を前にすると緊張しちゃいますよね。ここでは明るく締めたいので、ポジティブ文章を作ってくれたChatGPTさんに最後の言葉を任せましょう。


質問などありましたら、XかLinkedinまでお願いします。それでは!


MCPがもたらす変化は、「生成AIがTableauの外側からやってくる」だけでなく、「Tableauそのものの体験が変わっていく」ことを意味します。ダッシュボードをつくる、分析する、レポートを届ける──それらの一つひとつのプロセスが、自動化・対話化されていく中で、私たちの役割も静かに、しかし確かに変わりつつあります。 それでも変わらないのは、“問いを立てる力”と“判断の責任”です。 生成AIやMCPが当たり前になる時代においても、Tableau人材は、データ利活用の世界を形づくる「ファシリテーター」であり、「設計者」であり、「通訳者」であり続けるでしょう。 この変化のなかで、自分の知見をどのように埋め込むか。どのようにAIと協働するか。どんな体験をチームに届けていくか。そんなことを、一緒に考えていけたら嬉しいです。

© 2023 by Actor & Model. Proudly created with Wix.com

bottom of page