教えることについての悩み

(執筆時点で)現職に入社して1年半ほど、Tableau開発者として入社し複数開発案件をまわしつつ、同時に社内Tableau教育的な活動、DATA Saberコンテンツをお借りしたCreator向けトレーニング活動などを実施してきました。


TableauはHelp People See and Understand Dataの製品なので、ユーザーのTableauリテラシー、データリテラシーを上げていかないといけないという問題意識から(ほとんど有志企画ですが)Tableau教育活動に取り組んできました。

しかし教育活動に割く/割かなくてはいけない時間が増えるにつれ、自分の中で漠然とした悩みが生まれてきましたので、今回はその悩みと向き合い言語化してみようと思います。


以下が今回の主なトピックです。

  • キャリアの浅い段階で「教える」ことに携わることについて

  • 教えるときのスタンスについて:講師とコーチの違い

  • 開発者が「教える」ことを担うことについて


先にお断りしますが、この記事は筆者の独白的、思考の整理のための記事です。

考えながら書いているため文章がふわふわします。そういうものです。

自分について

まず最初に、自分のキャリアステージと現職での活動を端的に述べます。

  • 社会人4年目(執筆時)

  • 現職にはTableau開発者として入社

  • 主業務はTableauダッシュボード開発、Tableau活用コンサルテーション

  • 副業務は社内Tableau Dr、社内Tabelau NL執筆など

  • 課外活動的に社内Tableau教育などを実施

  • たまにTableau活用に関しての講義を実施


Tableauエンジニアとしての経験を積みつつ、社内TableauユーザーのBI活動をサポートするために入社し、目的の業務が出来ているので幸せな日々を過ごしています。

また社内ユーザー向けの技術的セッションなどを開催しつつ、社内Tableauコミュニティのサポートを行っています。DATA Saberトレーニングもその一環という感じです。


ざっくり言えば「Tableau開発や技術が好きな若手Tableauエンジニア」ということになると思います。

何が悩みか

上述の社内DATA Saberトレーニングについて、諸々の事情から自分が主に運営する形になりました。

ただし自分の主業務は開発なので、業務に支障が出ない程度の時間で運営、コンテンツ準備、講義とトレーニングを行っています。


ということで二足のわらじ状態で進めていましたが、トレーニング運営はやはり時間と手間がかかるもので、時間の使い方のバランスを失ってきたな、というのが1つ目の悩みです。


またDATA Saberトレーニングは基本的に初学者向けであり、Tableauの基礎を抑えるもののため、(知識の精緻化には役立ちますが)教えていて目新しくないことが2つ目の悩みです。

ただしこれはコンテンツに関する悩みではなく、教えるという行為自体への悩みです。詳細は後述します。


以下、この2つの悩みについて書きながら自分の思考をまとめてみます。

時間のバランスを失う悩みについて

最初から身も蓋もないことを言ってしまいますが、DATA Saber技術試験については基本的にKTさんの動画を見れば合格します。

とはいえ内容の理解には「なぜ?」に答える、または議論してくれる存在が大事なので、その辺りも込めて「師匠Saber」がApprenticeにつくというのが自分の理解です。


ということで社内トレーニングとはいえ基本的に「動画を視聴ください」で投げるか、動画に沿った内容を話していれば、講義またはトレーニングとして最低限の体は成します。


一方で自分の実施するトレーニングは英語話者向け資料の準備が必要であり、まず英訳または英語資料が必要になりました。

特に英語話者の方はKTさんの動画を使用できない(自動翻訳はまだ難しい)ので、そのハンディキャップを埋めるために、講義資料もまた詳細になっていきます。

(今にして思えばここを適当にする手もあったかもですが…自分はそうしないだろうなぁと)


ということで、自分たちは1時間の講義を各Ord.に対して実施しているので、それぞれの講義資料を作成する必要が出てきました。

全ての講義資料を自分が作ることも無く、また既存資料も参考として使えますが、(内容にもよりますが)1時間のプレゼン作成って結構時間がかかりますよね。

主業務に影響が出ないように活動しなければいけないので、どうしてもプライベート時間を使っていました。


悩み1:プライベートの時間が減った ・ブログ更新や学習が滞った ・業務時間外にトレーニング準備に取り組むことがあった ・マルチタスクなので疲労感が高かった


また書いていて少し悔しくなってきたのですが、開発案件に割ける時間、脳のリソースがどうしても減ってしまった印象があります。

自分は現在のポジションには基本的にTableau開発、活用支援をモチベーションとして入ったのですが、その本業に完全に集中できない状態、定常的に100%を割けていない状態がストレスになっていたかもしれません。

(開発案件の手を抜いたことは当然ありませんが、手が回りきらなくなる時に、本質的には割けるリソースがあるのに…と思ってしまうことに関してのストレスです)


悩み2:一番時間を割きたい開発業務に100%近くを投下できなかった


開発案件に関してもう少し書くと、前述のように自分のTableauエンジニアのキャリアは始まったばかりなので、キャリア成長を考えると基本的に技術的成長につながることをやっておいた方が良いように思えます。

つまり技術的(知識的)資産を増やすための業務・活動です。


これは次のセクションで掘り下げますが、教えるという行為は基本的に「知っていることを伝える」ことだと思います。

これは資産の質を上げることにはつながると思いますが、資産の量を増やすことには、やはりそれを目的とした活動(学習)には劣るように思います。


つまり3つ目の悩みは、キャリア形成のための技術的資産を増やすための時間が減ったことです。

悩み1と重なるところはありますが、言い換えれば知的好奇心のための時間が減りました。


悩み3:技術的資産のための時間、知的好奇心のための時間が減った


トレーニングに割いている時間と元気を使って、どれだけ自分の勉強を進められたのか。

将来のことを考えると、特に自分のようなキャリア初期の人間は、このリソースの使い方は正しかったのか。

このあたりの内容は考えてしまうなと思いました。


逆に自分が最前線にいる人間ではなく、例えば40代前後で育成やマネジメントをする立場であれば、この辺りの懸念が少ないのだろうか…と考えつつ、これは詮無い話ですね。

教えることへの悩み

続いて教えることそれ自体の話ですが、上で軽く触れたように、教える内容は基本的に「知っている」内容です。

そして知っていることを伝えることは簡単かと言うとそんなことはなく、話の構成や教える/教えない内容の吟味、ドキュメント化などに結構な時間を割くことになります。


自分は知らないことを知ることに喜びを覚える人間なので、どうしても「知っていることの体系化、精緻化」よりも「何かを新しく知ること」に精神衛生上の価値を感じます。


繰り返しになりますが、教えることは「知っていることの精緻化」です。

ここでいう精緻化は内容それ自体の精緻化もそうですし、また体系的理解の意味での精緻化も含みます(体系的に理解していないと人に教えるのは難しいので、このプロセスは必須のように思います)。


そしてこれは時間がかかる。絶対的な時間もそうですが、知的好奇心を満たすために使える時間が相対的に減ることも意味します。


もちろん過去のLOD解説記事や表計算解説記事のように、とても楽しい精緻化もあります。あの内容は未知を紐解くような過程を踏んでいたので、知的好奇心はかなり満たされました。


ただDATA Saberトレーニングはどうしても初学者向けなので、精緻化したとしても、知的好奇心はあまり満たされませんでした。


悩み4:教えることは知的好奇心をあまり満たしてくれない


さてここまで「教える」ことについて「自分が意外と楽しんでいない」ことに気づいてしまったわけですが、では「教える」行為を全否定するかというと、むしろその価値を感じ続けている自分がいます。


どういうことかと言いますと、「教える」行為は持っている技術的資産の質を上げる機会を与えてくれます。

教えるために調べ、考え、まとめた内容はTableau Publicにもブログにも書いてきましたが、それらコンテンツを書く機会を与えてくれた「教える」ことに、とても感謝しています。


さらに言うとTableauに限らずSelf-service-BI、Self-service-データ分析に携わる方は、ユーザーが良く使いデータから価値を生み出せるようにする教育や文化醸成の活動は(どの程度携わるかはさておき)避けられないと思います。

自分はTableau開発者として仕事していますが、開発だけしていれば良いという状況は経験上あまりありません。

ユーザーが実際に使うところのサポート、新しくどのような分析をしたらいいかの相談、ツールをどのように使っていけばいいかの相談など寄せられることが多く、これは結局広義のユーザー育成だと思っています。


Tableau関係者はユーザー育成からは逃げられないと思います。

なぜならHelp People See and Understand Dataのツールなので。People(ユーザー)が主役です。


では現状の何が良くないのか。

思うに、教える際のスタンスが良くないのだと思います。


今までの自分の「教える」活動は、メインを技術的資産形成や実践に置きつつ、散発的に必要に応じて知識の精緻化、ドキュメント化、Doctor活動を行ってきました。

言うなれば「コーチ」的な立場のように思います。手を取って教えるというよりも、手助けをする意味での教育活動でした。


一方で現在は「講師」的な教育活動が増えてきたように思います。

トレーニング運営、コンテンツ準備、質問対応、etc...

定常的に「教える」活動に時間を割かざるを得なくなり、また教えるスタンスも手を取って教えるような形になってしまっています。


今までは「教える」活動の解像度が自分の中で低かったのですが、実際に深く携わり、「教える」活動への自分の望む関わり方が見えてきたのかもしれません。


悩み5:講師ではなくコーチとして教える方が向いている


繰り返しになりますが「教える」ことは大変価値ある活動だと思います。

Tableau関係者の中で教育活動をされている方はそうですし、Tableauに限らず人に何かを伝え広めている方々は素晴らしいと思います。

また自分の知識の質を高めてくれる活動でもあります。


一方で「どのスタンスで教えるか」は重要な問題ではないか、ということが自分の結論です。自分はここの理解が足りていませんでした。

これからどうしていきましょうね

ここまで書いて自分が何にストレスを感じていたか分かってきたわけなので、未来のことを考えたいと思います。


基本的には「今の自分のキャリアステージを考えると、継続的リソースを必要とする教育活動は担わない方が良い」「最前線を引いたステージに達してから講師活動をしたい」ということが自分の中の結論なのかなと。

今はシンプルに技術的なブログを書きたいですし、色々出版されたVisual Analyticsに関する本を読みたいです。

端的に言えば、もっと自分のために時間を使いたいのかもしれませんね。


教育活動はもう少し散発的に携わる形で続けられたらいいなとは思います。

社内ユーザー会イベントや散発的な講義、ハンズオンなど。

DATA Saberトレーニングは…今後はいわゆる「弟子を取る」かはちょっと悩むかもしれません。


ということで今回は自分の教育活動に関する悩みを書いてみました。

もし似た境遇の方にコメントするとしたら

  • 教育活動はいいぞ

  • ただし付き合い方は考えた方が良いぞ

ということになるのかもしれません。


さらに言えば自分の能力不足やプライベートをもっと切り詰めろ、ストイックになれという話かもしれませんが、それは「人間だもの」ということで。


ということで、お悩み整理回でした。それでは。